中性子産業利用推進協議会

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8月26日プレスリリース
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
国立大学法人名古屋大学             
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 
J-PARCセンター                   

 パーキンソン病の発症は、脳内に存在する正常なタンパク質「αシヌクレイン」が、「アミロイド線維」という異常な集合体を作りはじめることが関与しているとされています。タンパク質は、アミノ酸がつながってできた骨格である「ひも」からアミノ酸側鎖の「こぶ」が突き出ています。そこで、アミロイド線維形成のしくみを明らかにするには、αシヌクレインの「ひも」や「こぶ」の動きを分子レベルで詳細に調べることが重要です。本研究では、J-PARC MLFのBL02「ダイナミクス解析装置(DNA)」を用いた中性子準弾性散乱実験を中心とした測定により、世界で初めて「ひも」の折れ曲がり運動と「こぶ」の局所的運動を同時に調べることができました。
 αシヌクレインがアミロイド線維を形成できる場合(中性で生理的濃度に近い塩濃度:条件①)、αシヌクレインの集合が足りず線維になり切れない場合(中性で塩がない:条件②)、線維が長くなる前に短い線維同士が急速に集合し、大きな塊を作ってしまう場合(酸性:条件③)の3つの場合について測定した結果、「こぶ」の局所的運動は、②→①→③の順に大きくなることが分かりました。これは、αシヌクレイン同士の結合に「こぶ」の局所的運動が働いていることを示しています。一方、「ひも」の折れ曲がり運動は、①で大きく、他の2つでは小さかったことから、アミロイド線維の形成には「ひも」の折れ曲がり運動が必須であると考えられます。アミロイド線維は、αシヌクレインの中央部分同士が結合することで形成されますが、以上より、まず「こぶ」の局所的運動が分子同士の相互作用に必要であり、さらに「ひも」の折れ曲がり運動によって分子の中央部分が露出することで、中央部分同士が結合していくというアミロイド線維形成のメカニズムを提案しました。
 本成果は、アミロイド線維形成機構の解明につながるだけでなく、タンパク質分子の特定の運動に着目し、それを抑制する薬剤分子を探索・開発するという、まったく新しい観点からの病気の治療/予防法の開発へとつながることが期待されます。

0830pakinson.png   αシヌクレインの「ひも」の折れ曲がり運動と「こぶ」の局所的運動