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中性子産業利用推進協議会

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パルス中性子の繰返し周期とカメラ露光タイミングを同期させた中性子ラジオグラフィのストロボ撮像により、自動車用熱交換器内を流動する冷媒流動状態のその場観察に成功しました。

自動車の高燃費化や将来的な電気自動車への移行を背景に、車載機器の小型化に対する要求が高まっています。小型化に向けた技術開発では、加熱と冷却、熱輸送などを扱う熱制御技術が重要な要素技術の一つとなっています。例えば、エンジン周辺のラジエーターやエアコンなどの熱交換器では、冷媒流動に伴う顕熱や、気液相転移に伴う蒸発/凝縮、あるいは、吸着/脱離、水和/分解などの反応熱が利用されています。これらの流動状態の正確な計測と現象理解に基づいた部品設計が重要となります。従来、金属等の伝熱材料で構成される熱交換器の一部を透明材料に置き換えて流動状態を観察してきましたが、この手法では観察対象周辺の熱伝達挙動が変化するため、実際の冷媒流動を捉えることは困難でした。特に、熱交換器内部の液膜の状況や気液混合状態の時間変化などの基本的な情報が不足していました。
本研究では、中性子ラジオグラフィのストロボ撮像を用いて、車載エアコン用熱交換器内の冷媒流動の観察を試みました。実験はJ-PARC MLFの中性子イメージング装置「RADEN」で行いました。図1に実験で用いた装置の外観写真を示します。熱交換器内の各流路の幅は約1.5mm、奥行は約10mmであり、マグネットポンプにより冷媒を循環させました。また、冷媒の流量と乾き度を流量調整弁と冷媒ヒーターを用いて制御し、PTCヒーターとブロワーにより正面から温風を吹き付けることで実働状態を再現しました。熱交換器を通過した中性子は厚さ0.1mmの6Li+ZnSシンチレータで可視光に変換した後、EMCCDカメラ(10241024ピクセル)により二次元透過画像として検出しました。その際、中性子の発生タイミング(25Hz繰返し)を外部トリガーとしてEMCCDカメラの露光を開始することでストロボ撮像を行いました。
図2に中性子ビーム強度150kW、EMCCDカメラの露光時間約20ミリ秒で撮像した冷媒流動の時間変化を示します。この測定では、流路全体を一度に観察するため、中性子の入射方向に対して熱交換器全体を約15度傾けています。初期段階では、液体状の冷媒(中性子透過率が低い部分)が、各流路に概ね均一に存在しています。温風による熱交換器の温度上昇に伴い、流路中に中性子透過率が高くなる領域が現れてくることが分かります。これは、冷媒流動がスラグ状となり、気泡が流路を高速で抜けたことによると考えられます。また、冷媒の瞬間的な跳ねなどの非定常な挙動が生じていることも初めて明らかとなりました。今後、中性子ビーム強度が高くなると、より高精細な透過画像の取得が可能になり、熱交換器などの「閉じた空間」で生じる気液二相流の現象理解が進むことが期待されます。
本研究は、株式会社豊田中央研究所、株式会社デンソーと共同で行いました。この場を借りて感謝申し上げます。

パルス中性子同期ストロボ撮像による熱交換器内部の冷媒流動観察-fig1.pngのサムネール画像

図1 車載エアコン模擬実験装置の外観

パルス中性子同期ストロボ撮像による熱交換器内部の冷媒流動観察-fig2.png

図2 熱交換器内の冷媒流動の時間変化