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中性子産業利用推進協議会

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研究会

平成30年9月26日(金)にエッサム神田ホール2号館501会議室において,平成30年度第1回構造生物学研究会を「新世代中性子構造生物学の目指すもの」をテーマに開催しました.参加者は36名でした.

昨年度,「新世代中性子構造生物学」を謳って相関構造解析を基盤にした新しい構造生物学の道筋を提案しました.今年度は,それが目指すものを明確にする作業を研究会の場で議論して進めたいと考えています.そこには製薬メーカーやSPring-8の創薬産業構造解析コンソーシアムからも参画していただくことにしました.また,最近の女性研究者の活躍振りには目覚ましいものがあり,本研究会においても,一線で活躍されている女性研究者に研究成果をお聞きすることにしました.

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<施設の概要>セッションでは,日下勝弘茨城大学教授が「iBIXの現状と将来計画」と題して,BL03茨城県生命物質構造解析装置「iBIX」の現状に加えて,今後10年間に県プロジェクトとして取り上げようとしている構造生物学に係わる研究課題を説明されました.

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<チュートリアル>セッションでは,山縣ゆり子熊本大学名誉教授が,「ゲノムの安定性に関わる酵素の機能解明と中性子構造解析の展望」と題して,酵素における損傷塩基を有する基質の認識と酵素反応機構について,水素の位置を決定しないと正確な機能解明ができないヒト酸化ヌクレオチド分解酵素について中性子構造解析を行った結果について報告されるとともに,J-PARC MLFにおける構造生物学研究の在り方について言及されました.

<構造生物学>のセッションでは,姚 閔北海道大学教授が「中性子回折によるアミド基転移酵素GatCABのアンモニア輸送機構解明の試み」と題して,触媒反応により産生されるアンモニアを分子外へ排出せず,

0928seibutu3.png次の反応の基質として使用する自給自足の仕組みを持っているタンパク質である,tRNA依存アミド基転移酵素GatCAB複合体におけるアンモニアの輸送輸送機構を解明するために中性子構造解析を進めたことや,大型結晶化において最終的にアガロースゲル法で成功したことが紹介されるとともに,中性子回折におけるいくつかの問題点を指摘された.

山下敦子岡山大学教授は「味覚受容体による味物質応答の相関構造解析」と題して,味覚受容体で唯一組換え発現に成功しているメダカ由来アミノ酸受容体T1r2a/T1r3細胞外領域を用いて,さまざまな基質アミノ酸との複合体の構造解析や生物物理学的解析を行った結果と現在の取り組みを紹介されました.

<創薬における量子ビームの利用>のセッションでは,理研の山本雅貴氏が「生命機能に迫る相関構造解析」と題して,最先端の生命科学研究では,生命機能を実現するダイナミクスが重要な課題となっており,高輝度放射光では膜タンパク質等の微小結晶構造解析を可能にし,XFELのフェムト秒X線レーザーによる動的結晶構造解析も始まっている,一方,クライオ電子顕微鏡では溶液状態の天然状態に近いタンパク質の動的構造解析が期待されている.そこで,タンパク質のダイナミクス研究で重要となる多様な解析情報を有機的に組合せた相関構造解析を紹介し,期待される役割を提示された.

田辺三菱製薬の宮口郁子氏は「蛋白質のX線結晶構造解析によるフラグメントスクリーニング」と題して,放射光施設での回折実験の自動化や速度向上などにより,結晶構造解析で
0928seibutu4.pngスクリーニングを行うと同時にヒットを確定することが可能となっているフラグメントスクリーニング法の迅速なヒット確定と構造情報取得などの利点を詳細されるとともに,大量のデータ処理やライブラリーの条件などの課題について紹介されました.

庄村康人茨城大学准教授は「X線結晶構造解析による水素分解酵素[NiFe]ヒドロゲナーゼの酸素耐性機構の解明」と題して,水素酸化還元触媒ユニット(ヒドロゲナーゼ)とNAD酸化還元触媒ユニットからなる複合体酵素であるNAD+還元ヒドロゲナーにおいて,鉄硫黄クラスターの酸化状態の変化が引き金となって酵素の分子構造が変化し,これが酸素に対する活性部位の防御に関連していることが見出されたことに関し,ヒドロゲナーゼの酸素耐性と鉄硫黄クラスターの機能との関係について紹介された.

今回の研究会では,酵素の機能解明やアンモニアの輸送機構,味物質の応答など従来の研究会で取り上げていなかったタンパク質の構造に係わる機能について活発な議論が展開されました.BL20「iBIX」では135Å立方という大型の格子結晶も解析可能であることが実証されており,多くのタンパク質の構造と機能との関係の解明に活用されることを期待したい.