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中性子産業利用推進協議会

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研究会

 平成29年3月8日(水)に研究社英語センター大会議室において,平成28年度第2回残留ひずみ・応力解析研究会を開催しました.これまでの研究会において過去最高となる100名もの皆様が参加されました.

 機械部品・構造物においては溶接部の残留応力が信頼性に及ぼす影響は大きい.そこで,今回の研究会では「輸送機器における残留応力評価」をテーマとし,輸送機器である鉄道車両の接合に利用されている摩擦撹拌溶接(FSW)による残留応力と,自動車部品における残留応力を取り上げ,残留応力測定技術と解析技術の輸送機器への適用状況を紹介するとともに,放射光や中性子を利用した溶接残留応力の実測例などを紹介していただきました.

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 最初に秋庭義明主査(横浜国大教授)から研究会の趣旨説明と残留応力測定技術に関係する国際会議の紹介がありました.

 <施設の概況>セッションでは,林眞琴氏(CROSS東海)からMLFにおける水銀ターゲットの改良計画と中性子産業利用の統計データの紹介がありました.

 <チュートリアル>では,原田仁平名古屋大学名誉教授が「X線・粒子線回折法による材料分析」と題して,X線・電子線回折現象の基本と,X線回折において散漫散乱パターンを解析することにより結晶状態を把握できることの紹介がありました.最近プロフィル解析で課題となっている結晶子サイズに関して熱心な討論がありました.また,大倉一郎大阪大学准教授は「アルミニウム合金摩擦撹拌接合部の残留応力が構造部材の終局強度と疲労強度に及ぼす影響」と題して,最近,アルミニウム橋が摩擦撹拌接合によって製作されていることや,摩擦撹拌接合およびMIG溶接により形成される残留応力の類似点と相違点を紹介されました.また,残留応力は構造部材の座屈強度にあまり影響しないが,その仕組みは,5000系アルミニウム合金と6000系アルミニウム合金とで異なることなどを紹介されました.

 <鉄道車両の構造信頼性>のセッションでは、㈱日立製作所の川崎健氏が,「FSWで接合したアルミ合金製の鉄道車両」と題して,構体構造の変遷と,FSWを適用した英国向けに衝突安全性を向上させた構体の開発などについて紹介されました.川上洋司大阪市立大学准教授は,「アルミニウム合金FSW接合部の残留応力評価」と題して,固相接合であるFSWを施工したアルミニウム合金における残留応力のX線回折法による測定結果を紹介されました.

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 <自動車・部品における残留応力>のセッションでは,中央発條の榊原隆之氏が,「自動車用ばねにおける残留応力」と題して,自動車用ばねにおける熱処理や表面処理による残留応力の重要性を指摘されたうえで,懸架ばねや弁ばねにおけるX線回折法による評価事例を紹介されました.ジェイテクトの楼黎明氏は,「自動車用ベアリングにおける残留応力」と題して,軸受内外輪と鋼球への残留応力付与方法や残留応力の測定ニーズ,さらには,現状の残留応力測定技術への取組み内容と課題について紹介されました.

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 <X線・放射光・中性子による応力測定>のセッションでは,佐野智一大阪大学准教授が「フェムト秒レーザピーニングによるアルミニウム合金の疲労特性向上」と題して,非接触で水などの犠牲層を用いず,直接材料に応力を負荷することによってピーニング効果を付与させることができるフェムト秒レーザピーニング法によって得られる機械的特性の向上とその機構について紹介されました.
 ㈱山本金属製作所の河合真二氏は「改良型深穴穿孔法による内部残留応力測定」と題して,板厚内部の残留応力を実測する手法としての改良型深穴穿孔法(MIRS法:Modified Internal Residual Stress)の特長とその各種材料へ適用事例を紹介されました.
 JFEスチールの須藤幹人氏は,「缶用薄鋼板の曲げ加工に伴う板厚方向ひずみ分布の実測」と題して,飲料缶等で用いられている板厚0.3mm以下の缶用薄鋼板の曲げ加工に伴う板厚方向のひずみ分布を放射光のひずみスキャニング法で実測し,従来から用いられてきた仮定がほぼ妥当であることを実証した結果を紹介されました.
 コベルコ科研の横幕俊典氏は「表面除去法で測定した残留応力分布の有限要素法による補正」と題して,逐次表面除去法によって物体表面近傍の残留応力分布を測定する場合,表面除去による再配分を考慮して補正する必要があるため,有限要素法により,異なる線膨張率を有する多層体に均一温度変化を与えることにより物体内部に連続的な残留応力分布を発生させ,その後,逐次表面除去を再現することにより応力補正行列を得,本手法による全表面層除去に対する補正応力分布は理論解によるそれと合致することを確認したこと,また,特定の残留応力分布で得られた補正行列が,任意の応力分布に適用できることを明らかにされました.

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 川崎重工業㈱の今村嘉秀氏は,「浸炭歯車における表面層の残留応力分布」と題して,浸炭層の炭素量分布に起因する無ひずみ状態の格子面間隔の変化を細い棒状試料を用いて測定し,その測定値の測定誤差を補正することにより浸炭歯車表面から約15mmの深さまでの残留応力分布を精度よく測定した結果を報告されました.

 最後に茨城県の峯村哲郎氏が閉会挨拶として今後の行事予定を紹介されました.

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今回の研究会では,輸送機器における残留応力評価という若干話題が限定されたものでしたが,世界的にインフラ設備としての需要が増加している鉄道車両や,自動車の信頼性と安全性に関わる部品の残留応力評価を対象としたことと,原田仁平名誉教授にX線回折の基本をご教授いただくということで,これまでになく多数の参加者があり,活発に議論が交わされました.J-PARC MLFのBL19「匠」の利用拡大に繋がることを期待したいと思います.