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中性子産業利用推進協議会

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研究会

 平成29年3月13日(月)に東京神田のエッサム神田ホール401会議室において,平成28年度液体・非晶質研究会を開催しました.参加者は44名でした.

 初めに,研究会の主査である山口敏男福岡大学教授から研究会発足に当たり,次のようなメッセージをいただきました.

 「J-PARC MLFが稼動して以来,昨年まではMLF利用者懇談会の液体・非晶質材料分科会として毎年一回日本中性子科学会の年会,あるいは,量子ビームフェスタの前後に1日から1日半のユーザーズ・ミーティングを開催してきました.ユーザーズ・ミーティングでは,J-PARC MLFに設置されている液体・非晶質材料を測定する分光器,特に,NOVA,TAIKAN,PLANET,DNA,AMATERASなどの装置グループの報告や,これらの装置を利用した最近の研究成果の紹介,ならびに,これらの装置を用いたデータ解析講習会を行ってきました.これまで行った講習会では,EPSRモデリングやRMCモデリング,PDR解析,NOVAデータ解析法があります.そのような活動をしているなかで,中性子産業利用推進協議会の林事務局長から本協議会に液体・非晶質研究会を立ち上げてはどうかという強いお誘いがありました。液体・非晶質材料分科会の役員とも相談した結果,本年度から液体・非晶質研究会として発足することになった次第です.
 本研究会としは,これまでのMLF利用者懇談会の活動内容を継承していきます.本研究会の目的として,国内の大学等の研究機関や産業界だけではなく,世界,特に,アジアの国々において液体・非晶質材料を扱っておられるユーザーが,MLFに設置されている各種分光器を使いこなすことにより,液体・非晶質材料研究を発展させ,ブレークスルーが生まれることを願っています.MLF利用者懇談会では,どちらかといえばアカデミアのユーザーが主でしたが,本研究会では産業界のユーザーにも積極的にご参加いただけるように努力していきたいと思います.」

 今回の研究会は,「非晶質材料の構造解析の現状」をテーマとしましたが,リバースモンテカルロシミュレーションの代表的なソフトウエアである「RMCProfile」を開発された米国ORNLのTucker博士に来ていただき,RMCProfileの概要の説明に加えて,実際にソフトを動かしてみるという講習も行っていただきました.

 最初に,川北至信幹事(J-PARC)から山口主査のメッセージと研究会の趣旨を説明し,林眞琴氏(CROSS東海)からMLFと中性子産業利用の現状を紹介する予定でしたが,常磐線の人身事故の影響で会場到着が間に合わなかったためスキップし,大友季哉幹事(KEK教授)が川北幹事の代わりに山口主査のメッセージを代読し,研究会の概要を説明されました.

 <チュートリアル>では,Tucker博士がRMCProfileに関して,午前中にTotal scatteringやAverage vs local structure,Information beyond the Bragg peaks,Gathering the data you need,Different ways of modeling local structure,RMCProfileについてご紹介いただいたあと,午後は,Hands-on tutorialとして参加者の皆さまに持参していただいたPCを使って実際にRMCProfileを使っていただきました.2時間という短時間での講習でしたが,ある程度理解していただけたものと思います.

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 <J-PARC MLF装置の現状>セッションでは,柴田薫氏(J-PARC)が,「ダイナミクス解析装置DNAを用いた広帯域μeV中性子分光の現状」と題して,J-PARC MLFのBL02「ダイミクス解析装置DNA」では,高速ディスクチョッパーと,試料で散乱した中性子をブラック反射(θB~87.5°)によりエネルギー選別する球面状Si111ウエハ結晶アナライザーを組合せることによりμeVレベルでの高エネルギー分解能を有していること,入射ビームバンドをスキャンすることにより,-400μeV<E<+600μeVの広帯域のエネルギー範囲が測定可能であるという特性を生かした液体・非晶質物質中の原子・分子・イオンの拡散現象などの研究例を紹介されました.また,大友季哉幹事(KEK教授)が「高強度全散乱装置NOVAにおける試料環境および解析環境整備」と題して,BL22「NOVA」の基本構造と適用分野,ならびに,試料環境と解析ソフトウエアについて説明されたあと,具体的な測定事例を紹介されました.

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 <熱電材料の構造解析>セッションでは,豊田中研の間広文氏が,「欠陥制御によるハーフホイスラー熱電材料の高性能化検討」と題して,環境調和型TiNiSn系ハーフホイスラー熱電材料の高性能化のためには,比較的高い熱伝導度を低減する必要があるが,Niを格子間に置くことことで熱伝導度を低減できること,また,高性能化のためには出力因子の増大も有効であり,適当なドーパントを選定し,第一原理計算した結果,高出力することを確認したことについて紹介されました.竹内恒博豊田工大教授が,「微細電子構造とフォノンの散乱機構を考慮した環境調和型熱電材料の開発」と題して,第一原理計算の発展や角度分解光電子分光に代表される精密な測定方法の開発により,フェルミ準位近傍の電子構造やフォノン分散に関する正確な情報が得られるようになっている状況を説明されたあと,それらを用いて得られている熱電材料における最近の研究成果と課題を紹介されました.

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 今年度から新たに開始した研究会ですが,従来のMLF利用者分科会でのワークショップに比較してほぼ2倍もの多くの皆さまに参加していただきました."RMCProfile"については,英語による講習にも拘わらず一般参加の聴講者は31名ありました.残念ながら産業界からの参加者は少なかったのですが,今後,この研究会の場を活用していただき,液体・非晶質材料を扱っておられる産業界の皆さまが,MLFに設置されている各種分光器を装置グループの支援をいただいて成果を挙げ,ブレークスルー技術・製品が生まれることを期待しています.