中性子産業利用推進協議会

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 平成31年3月27日(水)にエッサム神田ホール1号館401会議室において平成30年度第2回研究会を「新世代中性子構造生物学が目指すものⅡ-J-PARC MLFが目指す生命科学研究との整合性」をテーマとして開催しました.52名の参加者がありました.

 本研究会では,昨年度「新世代中性子構造生物学」を謳い,構造解析を基盤にした新しい中性子構造生物学を提案しました.今年度はそれが目指すものを明確にする作業を進めていますが.今回の研究会 では,J-PARC MLFにおける生命科学研究に対する考え方や方針(将来構想 )との整合性に焦点を当てて議論しました.

 事務局の野間敬SC(CROSS)がプログラムを紹介し,J-PARC MLFの最近の運転状況を報告した後,佐藤衛主査(横浜市立大学教授)が開会挨拶をされました.

0327sei_2018.png <チュートリアル>として,今野美智子茨城県産業利用コーディネーターが「中性子結晶構造解析で見えるタンパク質の水素」と題し,タンパク質中の水素原子を観測する方法とその意義について講演されました.

0327sei2_2018.png <J-PARC MLFにおける生命科学>セッションでは2件の講演がありました.
 金谷利治J-PARC MLFディビジョン長が「J-PARC MLFにおける生命科学研究」と題し,MLFにおける生命科学の現状での成果と今後の研究と施設整備の方向性について説明し,研究コミュニティのリーダーの方々から集めたご意見を紹介されました.
 杉山正明副主査(京都大学教授)は「新世代中性子構造生物学が目指すサイエンス」と題し,タンパク質の機能発現に結び付く時空間領域の,構造とダイナミクスを解き明かすために,走り始めたプロジェクトの戦略を紹介されました.

 <最近の話題>セッションでは4件の講演がありました.
 藤間祥子奈良先端科技大准教授は「リード化合物創成を目指した創薬標的蛋白質の構造機能相関解析」と題して,創薬標的として有望な細胞内の情報伝達タンパク質の結晶構造解析の進展について説明されました.
 千田美紀KEK特任助教は「良質なタンパク質結晶を得るための戦略」と題して,構造解析のために良質なタンパク質の結晶を得るために蓄積してきた経験の中から,結晶化条件やクライオプロテクタントへのソーキング条件の最適化について最近の進展を紹介されました.
 岡本祐幸名古屋大学教授は「効率的立体構造探索法による生体分子シミュレーション」と題して,生体分子シミュレーションに拡張アンサンブル法を適用し,球状タンパク質や膜タンパク質の立体構造予測について,多数の動画を使い説明されました.
 沈建仁岡山大学教授は「巨大膜タンパク質複合体の高分解能構造解析から探る光合成の仕組み」と題して,光合成において,巨大膜タンパク質複合体が太陽光エネルギーで水を分解し,分子状酸素を放出する反応を触媒する機構解明に関わるこれまでの研究成果と,残された課題,反応中のプロトンの挙動を検出するための中性子回折の必要性について講演されました.

0327sei3_2018.png 生命科学研究において,中性子の利用は大きな役割を担うという認識がありますが,中性子だけでは,非常に複雑な課題を解くことはできません,他の量子ビームによる解析や計算科学などを組み合わせることが必要です.それが「新世代中性子構造生物学」の趣旨ですが,今回の研究会でその具体的中身と拡がりが見えてきました.