中性子産業利用推進協議会

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平成31年1月30日(火)-31日(水)にエッサム神田ホール1号館301会議室において,平成30年度薄膜・界面研究会を「中性子反射率法の最新情報と将来計画」をテーマとして開催しました.46名の参加者がありました.

J-PARC MLFにおける二台の中性子反射率計を利用した学術成果と産業利用成果が着実に挙がりつつあります.BL06のスピンエコー装置の供用も開始され,中性子反射率法を使う研究は,益々幅広い学術領域で深化が期待されます.本研究会では中性子反射率の基礎から,実験装置の現状,ならびに利用成果が紹介されました.さらに,進行中の長期課題の進捗状況が報告され,中性子反射率法の将来へ向けての議論がなされました.

瀬戸秀紀副主査(KEK教授)の司会で,野間敬SC(CROSS)がJ-PARC MLFの運転状況を報告された後,田中敬二主査(九州大学教授)から「中性子利用のハードルが高いというのはもう過去のこととしよう」という主旨の開会挨拶がありました.続いて,茨城県の富田俊郎技監が「中性子の産業利用の現状」と題し,産業界に関わるJ-PARC MLFの課題採択状況や産業利用による主要成果を紹介されました.

0130haku2019.png <チュートリアル>では,青木裕之氏(J-PARC)が「中性子反射率の基礎」と題し,中性子反射率法の特長と J-PARC MLFにおける測定例ならびに解析について紹介されました.また,利用申請書はどのように書くのが良いか,というアドバイスもありました.

<論文紹介>セッションでは,犬束学神奈川大学助教が「中性子を使った薄膜・界面の新しい話題」と題し,中性子を用いたソフトマテリアルの薄膜・界面の研究について,off-specular解析,外場をかけながらのin-situ測定などの事例を紹介されました.

0130haku22019.png <装置紹介>セッションでは以下の4件の講演がありました.
山田悟史KEK助教が「BL16『SOFIA』の現状と産業利用」と題し,試料水平型反射率計「SOFIA」における,実験装置の開発状況と産業利用の成果について紹介されました.阿久津和宏氏(CROSS)は「BL17『SHARAKU』の現状と産業利用」と題し,「SHARAKU」の特長である,スピン偏極ビームの利用や磁石やクライオスタットなどのアクセサリーと,それらを使用した事例を説明されました.日野正裕京都大学准教授は「J-PARC MLF BL06(VIN ROSE)と偏極中性子反射率法」と題し,BL06の中性子共鳴スピンエコー装置の原理と現状について報告されました.青木裕之氏(J-PARC)は「重水素化ラボの整備状況」と題し,海外の状況とJ-PARCの現状を説明されました.

0130haku32019.png 二日目<中性子利用>セッションでは7件の講演がありました.
川浦宏之氏(豊田中研)は「Liイオン電池の電解質界面のオペランド計測」と題し,Liイオン電池の安全性や耐久性に大きな影響を及ぼすと考えられている電極被膜(SEI)の充放電中の構造変化を解析した結果を報告されました.阿久津和宏氏(CROSS)は「イオン液体中の電気二重層の構造解析」と題し,重水素でラベル化したイオン液体を用いて,イオン液体/電極界面の構造を解析した結果を報告されました.武田全康センター長(JAEA)は「JRR-3の運転再開へ向けた現状と中性子反射率計の今後」と題し,JRR-3の2020年秋の運転再開を目指して準備が進められていることを報告されました.堀耕一郎氏(住友ゴム)は「海外実験施設のトピックス」と題して,世界の主要な中性子実験施設を紹介し,ILLとISISの反射率計を用いた成果を説明されました.大野正司氏(日産化学)は「高分子積層膜の中性子反射率測定」と題し,有機積層膜では,密度差が小さいためX線反射率では解析が難しいが,中性子反射率ではコントラストがついて解析できた例を説明されました.宮﨑司CROSS次長は「調湿研究会の現状と今後」と題し,調湿研究会を立ち上げて重水を使った調湿環境下で中性子反射率測定を行った成果を紹介されました.瀬戸秀紀KEK教授は「中性子反射率による摩擦と潤滑の研究」と題して,摩擦と潤滑の本質的理解を目指して実施してきた研究の成果と現状を紹介されました.
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<長期課題報告>セッションでは,九州大学の田中敬二教授と高原淳教授が,J-PARC MLFの長期課題「親水性高分子の一次構造と水界面近傍における凝集状態」の進捗状況を報告され,竹中幹人京都大学教授が講評されました.

中性子反射率法を使ってin-situ測定をすると,薄膜や界面で起きていることを詳しく調べることができます.これによって電気化学反応や接着,摩擦と潤滑などの機構が次々と解明されていることが分りました.今後,実験技術のさらなる高度化により,応用範囲の拡大が期待されます.