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中性子産業利用推進協議会

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平成31年1月15日(火)に研究社英語センター大会議室において,平成30年度電池材料研究会を「二次電池における電池材料研究と実電池オペランド計測の最新成果」をテーマとして開催しました.74名の参加者がありました.

環境対応の輸送システムの主役となるEVのキーコンポーネントである二次電池については性能向上のため電極などの材料研究開発が活発に進められています.それと併せて,実電池の長寿命化に向けて,実電池の充放電過程を動的に観察するため,放射光や中性子によるオペランド計測が盛んに行われています.本研究会では二次電池への適用を目指す各種材料研究の現状と,実電池のオペランド計測の最新成果を紹介しました.

神山崇幹事(KEK)の司会で,野間敬SC(CROSS)がJ-PARC MLFの運転状況を報告された後,菅野了次主査(東工大)から次のような開会の挨拶がありました.
「これまでの流れにはなかった新しい電池が次々と登場し,それを支える基礎研究も活性化している.今年は電池にとって大きなターニングポイントとなるかもしれない.」

0115denti.png<電池材料研究>セッションでは,東北大学の高村仁教授が「水素化物系イオン伝導体の開発」と題し,高速リチウムイオン伝導を示すテトラヒドリドホウ酸リチウム(LiBH4)のようにB-Hを骨格とした巨大アニオンを含む様々なイオン伝導材料について,その材料的特徴や二次電池への応用について紹介されました.高木繁治氏(京都大学)は「中性子・放射光による蓄電池炭素負極の構造相転移解析」と題し,中性子回折と放射光回折による充放電過程における蓄電池の炭素(グラファイト)負極のオペランド構造解析によって,温度依存性,充電レート依存性,グラファイト構造依存性を調べた結果と,これらと電池性能との関係を考察した結果を報告されました.

0115denti2.png秋本順二氏(産総研)は「ガーネット型固体電解質材料」と題して,酸化物系全固体電池の電解質材料として期待されているガーネット型の骨格構造を有するリチウムイオン伝導性酸化物について,材料開発の進展や結晶構造の特徴,化学組成と導電率の関係について紹介されました.藤崎布美佳京都大学助教は「フッ化物イオン電池用固体電解質の結晶構造とイオン伝導経路」と題して,中性子回折によるフッ化物イオン電池用固体電解質の結晶構造解析例とフッ化物イオン伝導経路の解析例を紹介されました.

<チュートリアル>では,富安亮子九州大学准教授が「Conograph を用いたab-initio indexing」と題して,粉末回折パターンの指数付けソフトウエアCONOGRAPHを用いて粉末回折パターンから格子定数を求めて指数付けを行うまでの手順(ab-initio indexing)を説明されました.
<基調講演>では,菅野了次東工大教授が「電池材料と電池反応」と題して,リチウム電池の材料開発の歴史と現状,さらに,材料開発に関わる解析手法の変遷を振り返り,材料から見た電池反応の研究の現状を概観されました.さらに,固体電池に関して,材料開発と反応機構の解明に向けたこれからの課題について説明されました.

0115denti3.png<実電池のオペランド計測>セッションでは,平野辰巳氏(京都大学)が「リチウムイオン実電池内部の温度・応力のオペランド計測」と題して,リチウムイオン実電池(LIB)のサイクル時の劣化要因と考えられる,高い電流レートにおける電池内部の温度上昇やリチウムイオンの正負極間移動にともなう電極の膨張・収縮による応力などを評価するために開発した手法について説明し,この手法で小型のLIB内部における温度・応力分布を同時に評価した結果を紹介されました.石垣徹茨城大学教授は「「iMATERIA」におけるLiイオン電池のオペランド計測」と題して,J-PARC MLFに茨城県が設置した産業利用目的の汎用型 材料構造解析装置「iMATERIA」において,実電池のオペランド回折測定を実施する際に用いる測定機器の状況や測定例について説明されました.

0115denti4.png田港聡三重大学助教は「オペランド中性子回折測定による蓄電池反応解析」と題して,中性子回折法を用いて,実電池作動中の非平衡状態における蓄電池全体の反応を検出することに成功した結果を紹介されました.甲斐哲也氏(J-PARC)は「中性子イメージングによる角型リチウムイオン電池充電量の空間分布の可視化」と題して,ブラッグエッジイメージング技術によって負極のグラファイトの構造分布を可視化し,市販されている車のリチウムイオン2 次電池を解析して充電量の空間分布を調べた結果について報告されました.劣化した電池で充電量の分布が不均一になっている様子を確認できました.

近年,Li二次電池の利用はモバイル機器や輸送システムを中心に拡大を続けています.それに呼応するように有望な新しい材料が次々と登場し,実用化を目指した研究が盛んになっています.こうした応用研究は大変発展しているのですが,それを支える基礎の領域では,イオン伝導現象など,理解が不十分なことがまだ数多く残されています.今回の研究会では,いろいろと未解決の課題があることが判明しました.中性子によるオペランド計測は現象理解のための有力な手段です.基礎研究と応用研究にますます活用されることを期待します.