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中性子産業利用推進協議会

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平成30年3月26日(月)にエッサム神田ホール2F多目的ホールにおいて,平成29年度第2回残留ひずみ・応力解析研究会を「集合組織材における残留応力」をテーマとして開催しました.

構造物や部品に使用される材料においては,素材の製造プロセスにおいて圧延や押し出し加工などにより集合組織が形成されます.また,素材を構造物や部品に加工する過程においても,さまざまな塑性変形が付与されることにより集合組織が形成されます.今回の研究会では,集合組織を有する材料における残留応力解析を取り上げ,集合組織の解析法を始め,集合組織を有する材料における残留応力解析法,ならびに,各種の集合組織材における残留応力測定例を紹介していただきました.

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 初めに,富田俊郎茨城県企画部技監が「J-PARC MLFの現状と産業利用」と題して,J-PARC MLFにおける全体の課題採択状況,産業利用の採択状況の概要,ならびに,茨城県の産業利用への取組みなどを紹介されました.

 <チュートリアル>では,高木節雄九州大学教授が「Direct fitting法を応用した集合組織材の回折ヤング率の同定方法」と題して,Direct fitting法では,Williamson-Hall プロットの補正を最適化することで回折ヤング率の値を決定でき,しかも,得られた回折ヤング率の値と加工集合組織の間には良好な相関性があることを紹介されました.このことは集合組織材の残留応力測定の精度向上に大きく貢献すると期待されます.
 英崇夫徳島大学名誉教授は,「集合組織材と配向性薄膜のX線応力測定」と題して,X線応力測定の基本であるsin2ψ法において,圧延集合組織材や結晶配向を有する蒸着薄膜の場合sin2ψ線図が非線形となり,任意方向に回折線が存在しないためsin2ψ法を適用できない,それらの原因と応力測定の考え方についていくつかの応用事例と共に紹介されました.

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<集合組織>のセッションでは,井上博史大阪府立大学が「結晶性材料における集合組織解析」と題して,加工・熱処理時に生じる塑性変形や再結晶,相変態にともなって形成される金属材料の集合組織,ならびに,結晶性プラスチックにおける集合組織の解析結果について概説するとともに,アルミニウム合金圧延板における蓄積エネルギーの結晶方位依存性,および,Schulzの反射法による極点図測定と側傾法による残留応力測定の類似性について説明されました.
小貫祐介茨城大学助教は「集合組織と相分率の迅速測定技術の開発」と題して,約1,500本の検出器を有するBL20「iMATERIA」において,集合組織ならびに複相材料における相分率を非常に精度よく測定できる手法の開発経緯とその応用例,特に,熱処理中の相分率変化を追跡する実験装置について紹介されました.

 <中性子・放射光による集合組織・残留応力測定>セッションでは,CROSSの林眞琴氏が「集合組織を有するAl合金製嵌合継手の中性子回折による残留応力測定」と題して,集合組織を有するAl合金の冷し嵌め材の残留応力について,3軸方向で別々の回折面の格子ひずみを測定し,そのひずみを弾性定数の回折面依存性に基づき,1つの回折面に補正して解析する手法を紹介されました.
 西野創一郎茨城大学准教授は「一次加工により集合組織が発達した金属材料の残留応力測定」と題して,一次加工によって集合組織が発達した炭素鋼と棒材について,引抜きおよび矯正加工による残留応力の変化をBL19「匠」を利用した中性子およびX線回折によって測定した結果を紹介されました.
山中謙太東北大学助教は「高エネルギーX線回折を用いたTi−6Al−4V合金の引張変形中の転位組織解析」と題して,Ti−6Al−4V合金の熱間鍛造および金属3Dプリンターを用いて作製した試料を用いて,SPring-8 BL22XUにてその場X線回折測定を行い,ラインプロファイル解析により引張変形中におけるα相とβ相の転位組織変化を評価し,微細かつ体積分率の低いβ相についても解析を行うことに成功し,β相はα相に比べて初期転位密度が高く,引張変形に伴う転位増殖挙動も構成相間で大きく異なることを見出した結果について紹介されました.

0326zan3.png<三号炉の再稼動を見据えて>セッションでは,JAEAの鈴木裕士氏が「中性子応力測定装置RESA-1の現状と今後の展開」と題して,JRR-3の2020年秋の再稼働に向けて,RESA-1の維持管理と高度化を継続的に進めている現状と,J-PARC MLFのBL19「匠」との連携を含めた今後の展開について紹介されました.
最後の<総合討論>ではJAEAの秋田貢一氏の司会の元に,集合組織の評価方法,集合組織材の残留応力評価法,ならびに,残留応力測定技術全般に亘る議論が行われました.高木節雄九大教授の提案に基づいて,集合組織材をBL19「匠」において引張応力下で測定して手法を検討することの提案がありました.また,CROSSの林眞琴氏から無ひずみ状態の炭素鋼とステンレス鋼のdoの化学成分依存性を明らかにするために試料提供依頼がありました.

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集合組織材の残留応力測定技術の確立は長年の課題です.中性子回折を用いれば,より精度の高い測定の可能性があります.特に,高木節雄九大教授が提唱されているDirect fitting法を応用した集合組織材の回折ヤング率の同定手法を用いると,高精度に測定できる可能性があることが分かりました.今後,共同研究のかたちでその手法の確認を進めて行くことが必要であると考えます.今後とも残留応力測定技術の高度化を推進して行きたいと思います.