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中性子産業利用推進協議会

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 平成30年3月1日(木)に茨城県水戸市の茨城県立県民文化センター会議室において,平成29年度液体・非晶質研究会を開催しました.参加者は32名でした.

 今回の研究会では,準弾性散乱(QENS)の解析ソフトウエアの解析実習を主目的とし,J-PARC MLFにおいて準弾性散乱測定が可能な実験装置の現状の紹介,ならびに,産業利用を含む研究成果を数件紹介していただきました.

 初めに,研究会の主査である山口敏男福岡大学教授から研究会の趣旨説明がありました.

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 <QENSデータ解析ワークショップ>では,住友ゴム(J-PARC)の菊地龍哉氏が「液体・非晶質材料の準弾性散乱データ解析」と題して,モデルフリーでデータ解析し,液体のブラウン運動や併進振動,回転振動,ならびに,回転楕円体振動を分離して解析できることを紹介されました.QENS解析実習ではGUIを開発していただいた㈱クロスアビリティの坂牧隆司氏の指導により,BL14「AMATERAS」での測定データを用い,参加者に持参されたPCを使って実際に解析していただきました.1.5時間という短時間での講習でしたが,ある程度理解していただけたものと思います.

 <J-PARC MLFの装置>セッションでは,高田慎一氏(J-PARC)が「BL15「大観」の現状」と題して,「大観」の現状に関して本体の仕様と各種実験用に整備された周辺機器の概要を紹介するとともに,いくつかの実験例を紹介されました.次いで,古府麻衣子氏(J-PARC)が「冷中性子ディスクチョッパー分光器AMATERASの現状」と題して,冷中性子ディスクチョッパー型分光器である「AMATERAS」では,0.01~数10meVという広いエネルギー領域で,物質中の原子や分子,スピンのダイナミクスを調べることができることを実際の測定例で紹介し,液体・非晶質物質の緩和ダイナミクス研究におけるAMATERASの有用性を示されました.

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 <研究成果>セッションでは,吉田亮次福岡大学助教が「リチウム電解質溶液のプレピーク構造とダイナミクス」と題して,リチウムイオン電池用電解液として利用されている濃厚有機リチウム電解液(LiPF6/Propylene Carbonate溶液およびLiClO4/PC溶液)を,同位体置換中性子小角散乱と中性子スピンエコー法により観察し,プレピークがイオン部と無極性部のコントラストによって生じていることが明らかとなったことなどを紹介されました.

 住友電工の斎藤吉広氏は「X線散乱と分子動力学シミュレーションによる硫酸系水溶液の構造解析」と題して,電力系統の安定化を目的としたレドックスフローRF電池において,正極活物質に使用されているMnO2の析出挙動を調べ,電解液である硫酸系水溶液へのTi4+共添加がMn析出抑制に有効であることを見出し,そのメカニズム解明のため,水溶液中のイオンの配位構造について放射光分析と古典分子動力学シミュレーションを用って得られたた知見を紹介されました.

 山口敏男福岡大学教授は,MgCl2などの塩化物溶液の1GPaという超高圧下での結合挙動をBL11「PLANET」を用いて解析し,水構造は圧力が増加するとともに,また,金属イオンが増えるとともにより捩れることを紹介されました.

 Bing Li氏(J-PARC)は「Liquid-like thermal conduction in intercalated layered crystalline solids」と題して,熱電材料における相変化について準弾性散乱測定し,TAフォノンが超高速な原子併進障害によって抑制されることを紹介されました.

 東リサーチセンターの中田克氏は「人工腎臓膜における中間水の静的・動的構造解析」と題して,医療材用ポリマーの抗血栓性の制御に関して,ポリマーと中間的な相互作用をした中間水の存在が重要な役割を果たしていることに着目し,ポリビニルピロリドン(PVP)水溶液の中性子散乱測定を行い,中間水の静的・動的構造解析結果を紹介されました.

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 残念ながら一般参加者は13名と少なかったのですが,QENS解析の実際を習得していただく良い機会になったと考えます.また,研究成果の発表では液体の動的挙動を準弾性散乱測定で定量化できるという非常に興味深い手法を紹介していただくなど,大変活発な議論が展開されました.今後,BL06「VIN ROSE」の利用が本格化すると更に大きい成果が挙がり,液体・非晶質に関する研究が盛んになることが期待されます.