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中性子産業利用推進協議会

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平成30年1月22日(月)に研究社英語センター大会議室において,平成29年度電池材料研究会を「全固体二次電池への挑戦 -電池開発と材料研究の取り組み-」をテーマに開催しました.85名の参加者がありました.

 HEVやEVなどの環境対応自動車のキーコンポーネントである二次電池は,高容量化や大電流化などの高性能化だけでなく,高い安全性が強く望まれています.これに応えるため,全固体電池の研究開発が活発に進められています.本研究会では,全固体二次電池の開発の取組み状況と,充放電後の実電池材料の"乱れた結晶"の構造解析手法として期待されている結晶PDF解析を紹介していただきました.

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 <施設の概況>セッションでは,富田俊郎茨城県技監が「J-PARC MLFにおける中性子産業利用の現状」と題して,供用開始後8年を経たJ-PARC MLFにおける産業利用の状況と,MLFの産業利用を牽引してきた茨城県BL「iMATERIA」の利用状況や将来計画について紹介され,石垣徹茨城大学教授が「iMATERIAにおける周辺機器の整備と電池材料研究」と題して,iMATERIAの基本的機能に加えて,整備されている周辺機器について紹介されました.

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 <チュートリアル>では,井手本康東京理科大学教授に「実電池材料構造解析概論-結晶PDF解析の現状と課題 - リチウムイオン電池材料を例として-」と題して講演していただきました.Liイオン電池正極材料の充放電過程ではLiの脱挿入過程の構造変化が特性を支配します.電池特性に関係する電極材料の結晶構造を検討する際に,リートベルト解析で得られる平均構造だけでは説明ができないことがあり,詳細な局所構造解析が必要になる.その方法として対相関関数G(r)と原子間距離rの関係を求めるPDF解析法があります.本講演では,放射光と中性子によるPDF解析法について概観するとともに,Liイオン電池正極材料における充放電プロセスが平均・局所構造に与える影響などについて紹介されました.

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 <基調講演>では,研究会主査である菅野了次東京工業大学教授に「全固体二次電池への挑戦-歴史と現状,LGPSを巡る話題-」と題して講演していただきました.次世代電池の主役に躍り出た固体電池の開発の歴史と,近年ブレークスルーがなされた固体電解質についてご説明いただくとともに,固体電池のこれからを予想していただきました.

 <特別講演>では,トヨタ自動車の射場英紀氏に「全固体電池開発の取り組みと将来展望」と題して,EVやPHVなどの開発状況と,その基幹技術となる革新電池の研究開発状況,ならびに,革新電池の中で,硫化物全固体電池と酸化物全固体電池の各々について研究開発事例などを紹介していただきました.

 <全固体電池材料研究の取り組み>セッションでは,出光興産の樋口弘幸氏が「硫化物系固体電解質の特徴と抵抗低減に向けた取組み」と題して,硫化物系固体電解質の加工性の良さに着目して加工条件と電気化学特性の関係を調査し,その知見を利用したイオン伝導度向上および電極界面抵抗の低減技術について紹介されました.

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 NIMSの高田和典氏は「硫化物型全固体電池の正極界面設計と酸化物型への課題」と題して,全固体Liイオン電池ではイオンが動きにくい固体を電解質として使用するために入出力性能が低下するという課題を解決するために,高いイオン伝導度を示す固体電解質の探索が精力的に行われているが,電池部材間の接合界面におけるイオン輸送をも高速化する必要があるため,界面抵抗低減に取り組んでいる状況を報告されました.
 JASRIの尾原幸治氏は「高エネルギーX線PDF法による硫化物ガラスの構造解析」と題して,差分PDF法によるLi3PS4硫化物ガラスのアニール過程のガラス・結晶混在構造の分離技術開発や,秒・分オーダーのオペランド全散乱測定・PDF解析による電池材料開発への取り組みについて紹介されました.
 産総研の片岡邦光氏は「単結晶X線・中性子回折によるガーネット系固体電解質の結晶構造解析」と題して,酸化物系全固体リチウム電池の有力な固体電解質材料であるガーネット型固体電解質について,単結晶育成の試みや単結晶X線・中性子回折を相補的に利用した結晶構造解析への取組みについて紹介されました.

 チュートリアルでは,井手本教授に実電池の解析手法についてノウハウ的な部分も含めて詳しくご説明いただき,中性子を中心とした量子ビーム利用者にとってたいへん有意義な講演となりました.全固体電池関連のセッションでは,菅野教授の講演で全固体電池研究の歴史から最新の概況までが分かり,その後に続く企業や研究機関から講演で,最新の電池や材料開発の状況が紹介され,全固体電池に関わる研究開発の概要を知るまたとない機会となりました.全固体電池が,安全性だけでなくLiイオン電池の高出力化や高容量化においても非常に有望であることがクローズアップされ,全固体電池に益々期待が高まる研究会となり,4年振りの大雪という悪天候にも拘わらず最後まで熱心な質疑応答が交わされました.