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中性子産業利用推進協議会

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平成28年9月2日(金)に研究社英語センター大会議室において,平成28年度第1回生物構造学研究会開催しました。

厚生労働省は,平成27年9月にグローバル展開を見据えた創薬を目指して「医薬品産業の強化総合戦略」を策定しました.これは医薬品産業の競争力強化に向けた緊急的・集中実施的な戦略で,中性子の産業利用における生物構造学研究会のミッションとも大きく関わっています.そこで,今回の研究会では,その第一弾として,近年目覚ましい発展を遂げている構造生命科学の最前線から創薬を目指す医薬品産業の総合戦略を展望しました.

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初めに,日下勝弘茨城大学教授が「iBIXの現状と利用成果」と題して,BL03茨城県生命物質構造解析装置「iBIX」の現状について説明された.
<セッション1>では,清水敏之東京大学教授が「一本鎖核酸を認識するToll様受容体の構造科学的研究」,上久保裕生奈良先端大准教授が「システムズバイオロジーを指向した構造生物学的手法の開発」,㈱PRISM BioLabの小路弘行氏が「Unstructured/Structured 相互作用を標的にした創薬」と題して講演されました.清水教授は,細胞内のシグナル系を活性化させ自然免疫応答を引き起こすToll様受容体であるTLR8とTLR7は,ウイルスや細菌に由来する一本鎖RNAを基質とするが,性質が大きく異なる両者が同様に活性化するというメカニズムについて説明するとともに,創薬への応用について概説された.上久保准教授は,多成分平衡状態である蛋白質集団の構造/相互作用解析を実現することを目的として開発してきたマイクロ流路を活用した多成分滴定X線溶液散乱測定法を紹介された.小路氏は,Unstructuredタンパク質が関与するタンパク質/タンパク質相互作用を効率的に,かつ,選択的に阻害する化合物群を見出し,PRISMが有するHelix模倣技術を用いたUnstructured/ Structured相互作用を標的にした研究事例を紹介された.
 <セッション2>では,岩田想京都大学教授が「自由電子レーザーSACLAを用いた構造生物学」,野田岳志京都大学教授が「インフルエンザウイルスの細胞内増殖機構」,
Meiji Seikaファルマの山田雅胤氏が「薬剤耐性を克服する抗菌薬創出に向けた結晶構造解析」,第一三共RDノバーレの高橋瑞稀氏が「レニン阻害剤のStructure-based drug design」と題してそれぞれ講演された.岩田想教授は,自由電子レーザー実験施設であるSACLAでは,非常に短いパルス特性を生かして,タンパク質中での構造変化のスナップショットを撮る動的構造解析も可能となっていることと,SACLAがライフサイエンスにもたらすパラダイムシフトについて解説された.野田教授は,in vitro転写系と高速原子間力顕微鏡法ならびにクライオ電子顕微鏡法を組合せて,転写中のRNP複合体の微細構造解析を行って得られた最新の知見を紹介し,インフルエンザウイルスのゲノム転写機構について微細構造学的観点から説明された.山田氏は,-ラクタマーゼ阻害剤の創薬研究を題材に,製薬企業における結晶構造解析の活用事例を紹介された.高橋氏は,高活性で,経口吸収性に優れたレニン阻害剤の分子デザインにおいては,標的タンパク質の構造情報を利用したStructure-Based Drug Design(SBDD)が非常に有効であることを示し,その具体的な適用例について紹介された.

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今回の研究会では,大学側から構造生命科学の最前線をご紹介いただく一方,創薬を目指す医薬品メーカーから新薬創成のため総合戦略を展望していただいたため,生物構造学研究会としてはこれまで最多の55名もの参加者があり,活発な議論が展開されました.

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