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中性子産業利用推進協議会

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 平成29年2月15日(水)に東京神田のエッサム神田ホール2F多目的ホールにおいて,平成28年度非破壊検査・可視化・分析技術研究会を「国内外施設における中性子可視化・分析技術の状況とブラッグエッジイメージング研究の現状 - 施設の相補利用による効率的な研究開発とブラッグエッジ法の活用に向けて-」をテーマに開催しました.本研究会としてはこれまで最高の65名もの参加者があり大変盛況でした.

 J-PAR MLFや最近の国内外の中性子実験施設において進められている中性子ビームを利用した可視化・分析技術の開発と最近の利用状況を紹介するとともに,最近注目されている中性子イメージング手法であるブラッグエッジ法の概要と応用研究例を紹介していただきました。さらに,最新の中性子イメージングの産業応用研究例を紹介していただき,イメージング技術への理解を深め,施設の相補利用による研究開発の効率化を促進することを目的としました.

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 初めに,研究会主査である海老原充首都大学教授が開催趣旨を説明されたあと,<施設の概況>セッションでは,富田俊郎茨城県技監がJ-PARC MLFの概要と産業利用の現状を紹介されました.

<チュートリアル>では,藤暢輔氏(JAEA)が「ANNRIの現状と即発ガンマ線分析」,松本吉弘氏(CROSS東海)が「J-PARCのイメージング装置RADENの現状」と題してそれぞれ講演されました.

 藤氏は,即発ガンマ線分析の原理と特徴をその具体例を交えて解説され,さらに,J-PARC MLFのBL04「ANNRI」において開発を推進している大強度パルス中性子ビームと高効率のゲルマニウム検出器を利用した新しい即発ガンマ線分析法に関し,従来法に比べてSN比が改善され,峻別性能も向上している現状と今後の展望について報告されました.

 松本氏は,J-PARC MLFのBL22「RADEN」が世界発のパルス中性子イメージング専用装置であり,エネルギー分析型イメージング(ブラッグエッジ,共鳴吸収,偏極中性子イメージング),および,高性能なラジオグラフィやトモグラフィに関する新しい手法の開発と実験環境の整備が進められている最新状況を紹介されました.

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 <実験施設の現状>セッションでは,理研の大竹淑恵氏が「理研RANS1による非破壊観察評価の現状」,京都大学の高宮幸一教授が「KURにおける放射化分析」,J-PARCの甲斐哲也氏が「海外施設における中性子イメージングの現状」,海老原主査(首都大学東京教授)が「海外施設における放射化分析」と題してそれぞれ講演されました.

 大竹氏は,理研小型中性子源システムRANSでは中性子イメージング法による塗膜下鋼板内部腐食と水の動きの定量解析法の確立や,鉄鋼の塑性加工前後の極点図,ならびに,複相鋼板におけるオーステナイト相分率の定量化などの産業ニーズに基づいた「手元で手軽に使える中性子線利用」を発展させていること,また,社会インフラの非破壊観察を目的とした高速中性子線(エネルギー100keV以上)を利用した新たな取組みも展開していることを紹介され,中性子即発γ線によるコンクリート内塩分の定量評価や反射中性子線による内部水分,ならびに,空隙の可視化などの新たな計測手法を紹介されました.

 高宮教授は,KURは2017年の運転再開を目指して準備を進めている現状を紹介されたあと,KURにおける放射化分析研究に関する設備と運転再開後の運用について紹介されました.

 甲斐氏は,中性子ラジオグラフィの分野では,World Conference of Neutron Radiography((WCNR)とInternational Topical Meeting on Neutron Radiography (ITMNR)という2つの国際会議が2年毎に交互に開催され,情報交換を行っていること,また,2016年9月に北京で開催されたITMNR-8で報告された内容を中心に,海外の中性子イメージング施設の状況と最近の応用例について紹介されました.

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 海老原主査は,3.11大震災後,研究用原子炉の運転が止まり,国内では原子炉中性子を利用する放射化分析は行われていないが,国際的連携としてアジア原子力協力フォーラム事業が行われており,その中で研究用原子炉を利用した中性子放射化分析プロジェクトが継続されていること,また,アジア・オセアニアの12ヵ国が参加して年一度開催しているワークショップでの最新内容を紹介するとともに,欧米の施設における放射化分析の現況も紹介されました.特に,「はやぶさ」が「いとかわ」から持ち帰った微小サンプルのNAAによるIrの分析結果から宇宙物理学に新見解が見出されたという大変興味深い説明がありました.

 <ブラッグエッジイメージングの最近の研究>セッションでは,篠原武尚幹事が「ブラッグエッジ研究の概要」,京都大学の伊藤大介助教京が「ブラッグエッジ法によるPb-Bi合金の凝固過程の観察」,北海道大学の佐藤博隆准教授が「ブラッグエッジ法によるPb-Bi合金の凝固過程の観察」と題して講演されました.

 エネルギー分析型中性子イメージング手法の一つであるブラッグエッジ法では,結晶構造や集合組織,ひずみ,配向性などに関する観察対象内部の分布を画像として取得でき,近年,国内外の中性子イメージング研究者に注目されています.そこで,篠原氏は,ブラッグエッジ法の基礎と応用研究の状況について紹介するとともに,この手法により,どのような情報を取得することができるか,どのような対象に対して適用できるかを紹介されました.

 伊藤助教は,Pb-Bi合金は,低融点・高沸点で化学的に安定であることから,加速器駆動システム(ADS)の核破砕ターゲット兼冷却材として有望視されているが,過冷却によるPb-Bi合金の凝固や酸化物などの析出は,流路閉塞シビアアクシデントを引き起こす可能性があるため,ADSの安全性確保のために,Pb-Bi合金の凝固過程をブラッグエッジ法で観察し,得られた透過スペクトルの2次元分布から固液界面位置を特定するとともに,結晶構造の違いによる相変化特性への影響について調べた結果を報告されました.

 佐藤准教授は,中性子の多結晶回折に起因する「ブラッグエッジ」ならびに単結晶回折に起因する「ブラッグディップ」のデータ解析手法は日本が世界に先駆けて開発を進めている技術であり,結晶相・集合組織・結晶子サイズ・第1種/第2種ひずみ・結晶粒毎の結晶方位の「定量的」イメージングを可能とするもので,Rietveld型解析をはじめとする種々の透過率スペクトル解析法の原理と,それを利用した結晶性材料(特に鉄鋼材料)の定量評価/イメージング例を紹介されました.

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 <中性子イメージングの産業利用>セッションでは,デンソーの岡村徹氏が「中性子線を用いた熱交換器内二相流の可視化」と題して,自動車の主要部品のひとつであるカーエアコン用冷媒蒸発熱交換器(エバポレータ)の小型化のために,カーエアコン回路を模した試験装置を用いた中性子イメージングによるエバポレータ内の流れの可視化実験をBL22「RADEN」で行った概要と明らかになった課題を報告されました.

 最後に,峯村哲郎茨城県コディネーターが今後開催する予定の研究会と講習会の内容を紹介されました.

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 3.11大震災の影響でJRR-3とKURが停止している中で,世界のNAAに対する取り組み状況を説明していただきました.一方で,MLFのBL04「ANNRI」ではMPGAにより高精度に元素分析できる技術が開発されている状況が説明されました.MLFで可能なエネルギー分析型中性子イメージング手法の一つであるブラッグエッジ法イメージング法によれば,材料内部の様々な組織情報を取得でき,多くの材料評価への適用できるとの紹介がありました.そうした新しい非破壊検査・可視化・分析技術に対する期待から,65名もの参加者を得て,活発な質疑応答がありました.J-PARC MLFの利用拡大とJRR-3の早期運転再開を期待したいと思います.