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中性子産業利用推進協議会

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 平成29年1月25日(水)に東京飯田橋の研究社英語センター大会議室において,平成28年度電池材料研究会を「二次電池構造解析研究における最新成果と新たな展開」をテーマに開催しました.86名もの参加者があり大変盛況でした.

 HEVやEVのような環境対応自動車のキーコンポーネントである二次電池は、高容量化や大電流化などの高性能化だけでなく、高信頼・高安全性と低コスト化が強く望まれています.これらを実現するため,国内では複数の大型の国家プロジェクトが産学官連携で推進されています.そこで,今回は,その1つであるRISINGプロジェクトの成果と新たな展開を紹介していただくとともに,電池における重要課題である界面・表面の最新の研究成果や拡散現象についての新たな量子ビームによる解析手法による研究成果を紹介していただきました.

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 初めに,研究会主査である菅野了次東工大教授が開催趣旨を説明され,司会役の神山崇KEK教授がMLFの現状を簡潔に詳細されました.

 <施設の概況>セッションでは,林眞琴CROSS東海SCがJ-PARC MLFにおける産業利用の現状を,石垣徹茨城大学教授がiMATERIAにおける電池材料の解析技術を紹介されました.

 <基調講演>では,菅野教授が「蓄電池材料研究の現状と新たな展開」と題して,二次電池材料の開発の歴史に始まり,将来に向けた材料開発の在り方を紹介されました.また,菅野教授が重点的に開発を進めておられる全固体電池に関して,開発動向と成果トピックスを詳細にご説明いただきました.

 <量子ビームによるRISINGプロジェクトの成果>セッションでは,京都大学の河口智也助教が「放射光を用いた電池研究」,東工大の田港聡助教が「中性子回折法を用いた実用作動条件下における実電池反応解析」,KEKの米村雅雄准教授が「中性子回折法を中心とした蓄電池研究」と題してそれぞれ講演されました.
 河口助教は,SPring-8の蓄電池研究専用ビームラインを用いる,回折と分光を組み合わせた蓄電池解析技術と,それらの解析技術をRISING2プロジェクトに参画している研究機関や企業群に提供して革新型蓄電池の実用化に向けた研究を加速させている状況を説明されました.
 田港助教は,電極の構造変化や分布を解析する簡便かつ重要な手法である中性子回折法を用いて実電池作動中の非平衡状態における蓄電池全体の反応を検出することに成功した成果について紹介されました.
 米村准教授は,RISING事業でJ-PARC MLFに建設されたoperando測定を主目的にした蓄電池研究専用ビームラインBL09「SPICA」を用いた蓄電池研究の概要と,研究者が大量のリアルタイム測定データを用いて現象解明に集中できるよう支援する解析技術の開発に対するJ-PARCセンターとしての取組みとその成果について紹介されました.
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 <特別講演>では,RISING2プロジェクトリーダーである松原英一郎京都大学教授が「RISING2における蓄電池研究」と題して,エピタキシャル膜電極で単純化した電気化学界面を構築し,放射光X線と中性子線を用いた界面構造解析で反応を調べた結果とともに,Liイオン電池材料における界面現象に関する最近の成果について紹介されました.

 <電池材料の界面・表面解析>セッションでは,東京工業大学の平山雅章准教授が「放射光X線・中性子線を用いたリチウム電池材料界面の構造解析」,日産アークの今井英人氏が「Liイオン電池のSEI構造」と題してそれぞれ講演されました.
 平山准教授は,蓄電池材料研究においては,電極と電解質との界面における電気化学現象の解明と制御が重要で,反応場にある界面構造観察は反応解析に必須であることから,エピタキシャル膜電極で単純化した電気化学界面を構築し,放射光X線・中性子線を用いた界面構造解析で反応を調べた結果を紹介するとともに,Liイオン電池材料における界面現象に関する最近の成果についても紹介されました.
 今井氏は,電極表面に形成されるSEIが電極表面における電解液の連続的な分解を抑制し,安定的に充放電を行うために重要な役割を果たしている一方で,劣化した電池ではSEIに大きな構造変質が認められ,長寿命化に向けて改良が必要なため,放射光や各種ラボ分析ツール,大規模第一原理計算などを用いたSEI構造解析の現状について紹介されました.
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 <電池材料における拡散現象解析の新たなアプローチ>セッションでは,J-PARCセンターの柴田薫氏が「中性子準弾性散乱QENSを用いた電池材料中のイオン拡散運動の解析」,豊田中央研究所の杉山純氏が「ミュオンによる電池材料中の拡散現象の解明」と題してそれぞれ講演されました.
 柴田氏は,電池材料中のイオン拡散現象の微視的測定手段としてNMRやSR,QENSなどが用いられている中で,中性子準弾性散乱(QENS)測定により比較的速い拡散係数Dやジャンプ距離L,イオンキャリア濃度nなどのイオン拡散運動特性の定量化が可能になっていることを説明され,J-PARC MLFに設置されている広帯域高エネルギー分解能分光器BL02「DNA」を用いたLi固体電解質中のイオン拡散現象の解析例を紹介されました.
 杉山氏は,ミュオンでは,電池内や電池材料内のイオンの動き易さの指標である自己拡散係数Dを電極や電解質内だけでなく,その界面も含めて深さ方向変化を測定することができることやバルク材料中のLi+やNa+のDの測定結果を紹介されるとともに,将来展望を述べられました.
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 今回の研究会では,国家プロジェクトであるRISINGプロジェクトの成果と新たに開始されたRISING2プロジェクトの目指すところを紹介していただくとともに,量子ビームを活用した二次電池材料の開発状況,特に,電池における重要課題である界面・表面の最新の研究成果や拡散現象についての新たな解析手法による研究成果を紹介していただきました.電池材料開発の競争が激化する中で,86名もの参加者を得て,活発な質疑応答がありました.J-PARC MLFでは電池材料分野での利用が非常に多いのですが,これを機会に益々の利用拡大が期待されます.