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中性子産業利用推進協議会

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 平成28年11月14日(火)に東京神田のエッサム神田ホール401会議室において,「新規磁石材料研究と量子ビームによる構造解析の進展」をテーマとして平成28年度茨城県磁石材料分科会を開催しました.

 今回の分科会では,元素戦略プロジェクトを中心に国内で進められている新規磁石材料の研究に焦点を当てました.高性能磁石のニーズとシーズの観点からの特別講演があり,新規磁石材料の探索状況と,そこで活用されている中性子などの量子ビーム材料構造解析の最新事例が紹介されました.
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 初めに,富田俊郎茨城県技監が「iMATERIAにおける産業利用の状況」と題して,BL20「iMATERIA」における産業利用と茨城県の取り組みを報告されました.

 <チュートリアル>では,分科会代表である小野寛太KEK准教授が「量子ビームによる磁石材料研究の進展」と題して,中性子や放射光などの量子ビームを用いた磁石材料研究において,中性子と放射光の有効な活用方法と適切な実験装置の選び方や実験からデータ解析に至るまでの過程での注意点や気をつけるべきポイントについて紹介されました.
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 <特別講演>では,トヨタ自動車の庄司哲也氏が「次世代自動車のための磁石材料研究」と題して,電動化に向けた取り組みが強化されている自動車の開発において,磁石を含めた磁性材料の位置づけはますます重要となることから,モーター開発の歴史と磁性材料の高機能化の変遷を紹介するとともに,磁性材料の研究における中性子や放射光などの量子ビームの利活用の成果を紹介し,将来的な展望としてマテリアルズ・インフォマティクスへの期待を述べられました.

 杉本諭東北大学教授は,「新規磁石材料研究の進展と課題」と題して,新規磁石材料の探索を目指して状態図研究を中心とした計算科学と種々の材料学的手法を用いた開発研究(薄膜技術,微粒子・粉末技術,超高圧技術)を連携させて研究を行ってきた成果として,Rh基板上に成膜後窒化したFeCo-X(X=V, Ti)系膜が高い磁気異方性を示すこと,高温のz'相がb-Mn相とぺロブスカイト相に二相分離することによって希土類磁石並みの高保磁力を発現する 新しいMn-Sn-Co-N系バルク合金を発見したこと,ならびにに,リチウムアミドとMnの微粉末の高圧合成により高保磁力を示す正方晶系の新規化合物の合成に成功したことを紹介されました.

 <量子ビームを用いた磁石研究>セッションでは,NIMSの平山悠介氏が,「高飽和磁化、異方性磁界を有するNdFe12Nx薄膜の合成とXMCD測定によるNdの磁化の温度依存性評価」,JASRIの豊木研太郎氏が「走査型軟X線MCD顕微鏡によるNdFeB焼結磁石の磁区解析」,梅津理恵東北大学准教授が「機能性ホイスラー合金の原子規則配列と磁気構造」,斎藤耕太郎KEK助教が「NdFeB焼結磁石バルク試料の高温in-situ中性子回折」と題してそれぞれ講演されました.

 平山氏は,高い飽和磁化、異方性磁界、キュリー温度を有するNdFe12Nxについて,その薄膜の作製方法とその磁気特性の温度依存性について紹介するとともに,XMCD測定も併用してNd副格子とFe副格子の磁化の温度依存性をそれぞれ独立に評価した例を紹介されました.

 豊木氏は,SPring-8においてNd焼結磁石の破断面における磁区変化を観察可能な走査型軟X線MCD顕微鏡装置を開発し,飽和磁化状態から逆磁界を印加して磁化反転させる過程について、逆磁区形成とその拡大過程を鮮明に可視化するとともに,破断面と研磨面に形成される磁区の特徴の相違をはじめとする最近の磁区観察結果について報告されました.

 梅津准教授は,2種の遷移金属元素と1種の半金属・半導体系元素から構成されるホイスラー合金における規則度の評価を精度高く行うためには中性子回折実験が必須であること,ならびに,Mn基・Co基ホイスラー合金などにおいて規則度を評価して磁気構造を解析した結果を紹介されました.

 斎藤助教は,NdFeB焼結磁石の保磁力は主相の形状や主相粒間の粒界相の分布や厚さによって決まることから,中性子回折により,熱処理中の焼結試料内部主相及び副相の格子定数を測定し,試料長さの温度変化を検討した結果を紹介されました.
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 最後に,峯村哲郎茨城県CDが閉会挨拶として今後の研究会や講習会の開催予定などを紹介されました.

 34名の参加者があり,活発な議論が展開されました.iMATERIAでは,磁性材料の構造解析が可能であり,特に,中性子回折の特長としての各結晶格子サイトの元素占有率を定量的に解析できることが磁石材料開発にとって大きいメリットとなります.ハードマターの小角散乱実験も可能となっており,放射光や透過電子顕微鏡などとの併用によって,より性能の高い次世代磁石材料の開発にiMATERIAの活用をお願いしたいと思います.