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中性子産業利用推進協議会

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 平成28年11月14日(木)にエッサム神田ホール401会議室において,平成28年度ソフトマター中性子散乱研究会を「散乱法と観察法におけるコントラスト変調技術の最前線」をテーマに開催しました.

 ソフトマターの構造解析においては直接観察法と散乱法が用いられます.今回の研究会では,初めにJ-PARC MLFでの中性子散乱を使ったソフトマターに関する成果の概要について施設側からご報告いただいた後,小角散乱のチュートリアルを主査である竹中幹人京都大学教授が行われました.その後,散乱法と直接観察法におけるコントラスト変調技術の最先端の話題をご提供していただき,多成分系試料の観察に有効なコントラスト変調の最先端手法を議論しました.
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 初めに,研究会の主査である竹中幹人京都大学教授が研究会の趣旨を説明されたあと,<施設の概況>セッションにおいては,林眞琴CROSS東海SCがJ-PARC/MLFにおける産業利用の現状を説明されました.次に,CROSS東海の富永大輝氏が「J-PARC MLFにおけるソフトマター研究」と題して,中性子をソフトマターへ適用する場合の有用性や重水素化の必要性などについて紹介されました。

 <チュートリアル>セッションでは,竹中教授が「各種散乱法を用いた高分子系の階層構造解析」と題して,X線と中性子小角散乱法の原理と解析法について詳細に説明された後,放射光小角X線散乱法の応用事例を紹介され,最後に中性子小角散乱法への期待を述べられました.
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 <散乱におけるコントラスト変調と最新技術>セッションでは,小泉智茨城大学教授(代理:能田洋平茨城大学講師)が当初予定を変更して「iMATERIA小角散乱機能の現状」,能田洋平講師が「動的水素核スピン偏極によるコントラスト変調中性子小角散乱-高分子複合材料への応用事例-」,日産アークの岩井良樹氏が「同位体を用いたプロトン伝導性固体高分子膜のダイナミクス解析」と題して講演されました.

 小泉教授は,茨城大学が,茨城県材料構造解析装置「iMATERIA」に加えて,リガク製のナノビューア装置や走査型電子顕微鏡を活用して,コントラスト変調法や動的核スピン偏極法,3次元小角散乱法などの技術開発を進めている状況,ならびに,理研の小型中性子源RANS-1を利用する小角散乱装置「SANS@RANS」についても紹介されました.

 能田講師は,コントラスト変調法と核スピン偏極法について説明された後,動的水素核スピン偏極によるコントラスト変調中性子小角散乱の活用事例として,タイヤゴム材料の構造解析例を紹介されました.

 岩井氏は,NMR(核磁気共鳴法)の原理と優位点を説明された後,重水(2H)や17Oでラベル化した水で処理した電解質膜をNMRで観察することにより電解質膜中のプロトンダイナミクスを選択的に観測する手法を紹介されました.
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 <観察法におけるコントラスト変調と最新技術>セッションでは,産総研の小川真一氏が,「産総研でのヘリウムイオン顕微鏡(HIM)応用技術の研究開発」,中嶋健東京工業大学教授が「20 AFMナノメカニクスによるソフトマター研究」,J-PARCセンターの青木裕之氏が「高分子材料の単一分子計測:ラベル法を用いた分子鎖の形態とダイナミクスの解析」と題してそれぞれ講演されました.

 小川氏は,HIM(Herium Ion Microsope)を用いた高コントラスト・低ダメージ二次電子像取得特性と加工特性を紹介されるとともに,ナノエレクトロ二クスや生体・バイオ材料評価・加工に応用した結果を紹介されました.

 中嶋教授は,原子間力顕微鏡(AFM)を用いてポリマーアロイコンポジットやゲル,生体材料などにおいてどのような情報が得られるのかについて紹介されました.

 青木氏は,高分子材料中の分子をラベル化することにより,回折限界を超える超解像技術を用いた単一高分子鎖の構造と分子運動性の実空間評価法について紹介されました.

 よく「一筆書き」とも称される小角散乱パターンを詳細に解析すれば,高分子材料のナノ階層構造をきちんと評価できることが分かり易く紹介され,また,動的水素核スピン偏極によるコントラスト変調中性子小角散乱法という新しい解析手法が紹介されました.直接観察法では,HIMやAFM,ラベル法によりナノ構造を従来とは全くことなるイメージで各種情報を取得できることが紹介されました.散乱法だけでなく,直接観察法も駆使することが高分子材料の構造評価にとって非常に有効であることを議論する有益な議論の場になりました。

 38名の参加者があり活発な議論が展開されました.今後,BL15「大観」やBL20「iMATERIA」の小角散乱機能の利用拡大が期待されます.