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中性子産業利用推進協議会

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 平成28年11月11日(金)にエッサム神田ホール3F大会議室において,平成28年度金属組織研究会を「量子ビームによるイメージング技術の最前線」をテーマに開催しました.

 中性子イメージングは,結晶構造情報を含むブラッグエッジ法の開発により,材料,特に構造材料研究への新たな利用展開が期待されています.非破壊で材料の生きたままの姿を観測できるという,これまでのあらゆる手法を凌駕するポテンシャルを有する一方で,得られる情報の方位関係,マッピングの最小グリッドサイズなど他のイメージング/マッピング手法と較べてのデメリットも少なくありません.そこで,本研究会では構造材料の微細構造の空間分布についての情報を得られる種々の手法について,各分野の第一線で活躍する研究者に最新の情報を提供いただくとともにその実験的な可能性と数値科学的手法による新展開の可能性を議論しました.
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 初めに,研究会主査である大沼正人北海道大学教授が研究会の開催趣旨を説明されました.

 <施設の概況>セッションにおいて富田俊郎茨城県技監がJ-PARC/MLFにおける産業利用の現状を説明されました.次に,CROSS東海の林田洋寿氏が「BL22「RADEN」の現状とイメージング測定例」と題して,「RADEN」におけるブラッグエッジイメージングや共鳴吸収イメージング,磁気イメージングというパルス中性子の特徴を活かした新しいイメージング技術の現状とイメージング測定例を紹介されました。

 <放射光によるイメージング>セッションでは,戸田宏之九州大学教授が「シンクロトロン放射光マイクロトモグラフィーによる4Dイメージングとその応用」,奥田金晴東北大学教授が「DP鋼板の引張変形中におけるボイド生成X線CT解析」,豊田中央研究所の瀬戸山大吾氏が「SPring-8豊田ビームラインにおける3D材料強度評価」と題してそれぞれ講演されました.

 戸田教授は,SPring-8で行っている空間分解能1μm程度の投影型マイクロトモグラフィー,および,100nmオーダーの結像型マイクロトモグラフィーとその応用例,ならびに,マイクロトモグラフィーによる多結晶組織3D/4D再構成と細束X線によるXRD計測を組み合わせた新しいX線回折援用結晶粒界追跡法(DAGT法)について紹介されました.奥田教授は,強度と延性のバランスに優れた複合組織(DP)鋼板において,組織の違いによるボイドの生成・成長過程を観察し,塑性不安定化や破壊過程とミクロ組織との関係を調べた結果を報告されました.

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 瀬戸山氏は,材料内部の3次元結晶方位マッピングを可能にする走査型3DXRD顕微鏡法による微視的な変形挙動を非破壊評価する技術や部品内部の局所ひずみ分布を評価する自転・公転型スパイラルスリット,および,放射光ラミノグラフィを活用した損傷過程の追跡法について紹介されました.

 <中性子によるイメージング>セッションでは,佐藤博隆北大准教授が「中性子透過ブラッグイメージングによる結晶組織構造パラメータの広範囲可視化」,JFEスチールの川崎由康氏が「各種TRIP鋼板の組織解析と引張変形挙動」,富岡智北大助教が「遺伝的アルゴリズムを用いた測定データの特徴量抽出」と題して講演されました.

 佐藤准教授は,パルス中性子源を利用した透過イメージングでは,ブラッグエッジ(多結晶)やブラッグディップ(単結晶)といった回折現象に起因するプロファイルが現れるため,透過イメージング法が持つ「広い視野」と「高い空間分解能」という二つの特性を有した結晶組織構造解析が可能で,この手法を利用した相分率・集合組織・結晶子サイズ・ひずみ等の構造パラメーター可視化例を紹介されました.

 川崎氏は,変形中に準安定オーステナイトがマルテンサイトに変態することで,高い加工硬化率と高強度高延性が得られるC系TRIP鋼板とMn系TRIP鋼板の引張変形過程における加工/変態発熱のその場観察や,微小グリッド法による局所ひずみ測定,SEM/EBSDによるミクロ組織観察などにより,'試験片全体の変形'と'微小領域のミクロ組織の変化'の両面から解析した事例を紹介されました.

 富岡助教は,スペクトルデータ等の測定データからピークのエネルギー,半値幅,強度等のパラメータを抽出するための手法として実数型遺伝子を用いた遺伝的アルゴリズムによる最小二乗法を紹介されました.
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 放射光による超高分解能のCT技術や,マイクロトモグラフィとXRD計測を組み合わせたX線回折援用結晶粒界追跡法,材料内部の3次元結晶方位マッピングを可能にする走査型3DXRD顕微鏡法に加えて,パルス中性子によるブラッグエッジイメージングや共鳴吸収イメージング,磁気イメージングという新しいイメージング技術が、鉄鋼の新材料や信頼性評価技術の開発にとって非常に有効であることを議論する有益な議論の場になりました。

 57名の参加者があり活発な議論が展開されました.今後,BL22「RADENA」の利用拡大が期待されます.