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中性子産業利用推進協議会

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 平成28年11月1日(火)に東京神田のエッサム神田ホール401会議室において,「iMATERIAにおける小角散乱機能の進展」をテーマとして茨城県平成28年度小角散乱分科会を開催しました.

 茨城県が中性子の産業利用促進のためにJ-PARC/MLFに設置した茨城県材料構造解析装置(iMATERIA)では,一昨年11月に小角散乱機能の供用を開始しました.この1年で一層の高性能化が進むとともに,スピン偏極コントラスト変調法のような世界に先駆けた機能の準備を進めています.今回の分科会では,放射光などの量子ビームによる小角散乱解析の事例やiMATERIAでの小角散乱機能向上への取り組みと最新の実験例を紹介しました.

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 初めに,富田俊郎茨城県技監に「iMATERIAにおける中性子の産業利用」と題して,J-PARC MLFの現状,ならびに,iMATERIAの産業利用と茨城県の取り組みについて紹介していただきました.次に,分科会代表である小泉智茨城大学教授が,「iMTERIA小角散乱機能の現状」と題して,小角散乱機能の整備状況と燃料電池触媒の測定事例を紹介するとともに,現在整備を進めている動的核スピン偏極法と斜入射法の考え方を説明されました.
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 <チュートリアル>セッションでは,豊田中央研究所の原田雅史氏が「小角散乱による微粒子分散系の解析」,能田洋平茨城大学講師が「コントラスト変調SANSの現状と展開」と題してそれぞれ講演されました.

 原田氏は,SPring-8に整備されている豊田ビームラインでの小角/広角散乱による微粒子分散系のin-situ観察や乾燥過程のコンピュータシミュレーション,ならびに,粒径分布と粒子間相互作用の評価など,多彩な小角散乱解析結果を紹介されました.

 能田講師は,重水素置換によるコントラスト変調法と水素核スピン偏極コントラスト変調法の原理について実測例を交えて解説されました.タイヤなど,高分子へ無機微粒子を充填したナノコンポジット材料におけるでは,微粒子表面への高分子吸着層の観測がスピン偏極コントラスト変調法によって可能になることを示されました.

 <最近の実験例>セッションでは,茨城大学大学院修士課程1年生である稲田拓美氏が,「SAXS及びSANSによる燃料電池触媒の構造解析」,蟹江澄志東北大学准教授が「表面修飾サイズ形態制御無機ナノ粒子のナノ組織構造解析」,武野宏之群馬大学准教授が「高分子-クレイブレンドハイドロゲルの構造解析」と題してそれぞれ講演されました.

 稲田氏は,固体高分子型燃料電池の触媒層である高分子電解質「ナフィオン」における側鎖の類似物質と白金微粒子の混合溶液について,中性子小角散乱法とX線小角散乱法による構造解析結果と,コントラスト変調法による軽水/重水混合溶媒の測定結果を紹介された.初めての講演にも拘わらず内容の濃い発表でした.

 蟹江准教授は,サイズ・形態を厳密に制御した無機ナノ粒子表面に自己組織性有機分子を修飾することにより得られる有機無機ハイブリッドナノ粒子が形成する自己組織構造を小角散乱法により解析した結果について紹介されました.形状やサイズを任意に制御できるという非常にユニークな技術に高い関心が寄せられていました.

 武野准教授は,クレイの分散剤を用いることによって単純混合により作製可能で,力学的にタフな高分子-クレイブレンドハイドロゲルを開発され,その高分子-クレイブレンドハイドロゲルに対して、コントラストバリエーション小角中性子散乱法と放射光小角X線散乱法を組み合わせることによって構造解析した結果について紹介されました.

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 iMATERIAでは,コントラスト変調法や水素核スピン偏極コントラスト変調法により高分子系材料のナノ構造をより高精度に解析できる機能が整備されつつあり,分科会活動においては,化学系企業が集まって共同実験を進め,その機能の実製品適用性を評価しています.その成果は近い将来分科会で公開されますのでご期待いただきたいと思います.また,高分子系材料だけでなく,鉄鋼材料のナノ構造評価のための設備も整備しました.皆さまのご利用をお待ちしています.