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中性子産業利用推進協議会

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 平成28年9月29日(木)に東京神田のエッサム神田ホール多目的ホールにおいて,「いばらき量子ビームセンターの物質科学研究」をテーマとして平成28年度物質科学研究会を開催しました.

 茨城大学では、フロンティア応用原子科学研究センターが,茨城県がJ-PARC/MLFに設置している2台の中性子実験装置(BL03「iBIX」とBL20「iMATERIA」)を運転・維持管理しています.さらに,今年度より理工学研究科に量子線科学専攻が新設され,センターでの学生教育と研究がより活発に行われることになりました.これを機会に,iMATERIA装置グループが将来の産業利用拡大のために推進している研究内容を紹介するとともに,茨城大学における物質科学研究の最近の成果を紹介することを目的に開催しました.

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 初めに,富田俊郎茨城県技監に「J-PARC/MLFの産業利用および茨城県BLの運営状況と題して,J-PARC/MLFの現状と産業利用課題の統計データ,茨城県BLにおける産業利用成果,ならびに,茨城県BLの運営状況を紹介していただきました.次に,伊賀文俊茨城大学教授が,「茨城大学の物性物理学:量子線科学専攻とフロンティアセンター」と題して,4月に設置された理工学研究科の量子線科学専攻の概要と,フロンティア応用原子科学研究センターの新しい体制について紹介されました.

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 <iMATERIAにおける材料研究>セッションでは,石垣徹茨城大学教授が「iMATERIAによる電池材料の構造研究」,星川晃範茨城大学准教授が「クラスレートハイドレートの構造研究」と題してそれぞれ講演されました.
 石垣教授は,iMATERIAの基本構造と各種の周辺機器の整備状況について説明した後,茨城県プロジェクトにおいて得られている二次電池材料に関する研究成果を紹介されました.
 星川准教授は,これまでにiMATERIAで測定した様々な炭化水素ガスハイドレートに関して,リートベルト法とマキシマムエントロピー法による構造解析の成果として,炭化水素ガス分子がカゴ状の構造の中に内包されている様子を散乱長密度分布として視覚的に捉えられること,また,炭化水素ガスの重水素化によるコントラストの違いについて紹介されました.

 <J-PARC/MLFの研究現場から>セッションでは,BL02「DNA」の装置責任者であるJ-PARCセンターの柴田薫氏が「高エネルギー分解能中性子分光器DNAにおける産業利用研究の現状」,平賀晴弘茨城大学准教授が,「中性子回折を用いた元素戦略研究 ~電子材料分野~」と題してそれぞれ講演されました.
 柴田氏は,ダイナミクス解析装置であるBL02「DNA」は,μeV,ナノ秒の比較的ゆっくりした原子・分子やスピンの拡散運動・振動状態を高いS/N比で測定可能な高エネルギー分解能分光装置であること,また,その特長を生かして実施されてきた産業利用研究のなかで幾つかの特徴的な実例を紹介されました.
 平賀准教授は,銅酸化物超伝導体には見られなかった第二超伝導ドームがLaFeAsO1-xHx(x=0.2~0.4)で発見されたことに基づき,ドープ域にどのような相があるかを,中性子・放射光X線・ミュオンを活用して検討した結果,中性子回折からは高ドープ域に2番目の反強磁性相が現れること,また,他のプローブの結果と合わせて,x~0.5が第2超伝導相を産み出す第2の母物質である可能性を示すに至ったことを紹介されました.
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 <茨城大学における物性物理研究>セッションでは,横山淳茨城大学准教授が「強相関f電子系の超伝導」,桑原慶太郎茨城大学教授が「熱中性子吸収物質の粉末中性子回折」,大山研司茨城大学教授が「中性子ホログラフィー法によるドープ系機能性材料での局所構造研究」と題してそれぞれ講演されました.
 横山准教授は,比較的よい電気伝導性を示すものの,それを担う伝導電子の有効質量が通常の100-1000倍にもなる「重い電子系」では,伝導電子の有効質量が大きいことに起因して,磁場下においてスピン自由度が超伝導物性に大きく影響を与える結果,超伝導の上部臨界磁場で超伝導破壊が1次相転移でおこるという特異な性質について紹介されました.
 桑原教授は,Eu系充填スクッテルダイトの中で最も高い相転移温度で強磁性転移を示すEuFe4As12における強磁性秩序相が,Feの3d電子も関与したフェリ磁性である可能性を検証するために,高エネルギーパルス中性子を利用した回折実験結果について紹介されました.
 大山教授は,機能性材料のマクロな性質が微少量ドーパントに支配されるため,従来の散乱実験技術の延長上にはない「中性子ホログラフィー」によってドーパント周囲の3D原子局所構造を観測する技術の開発に取り組んでおり,中性子ホログラフィーの原理とメリット,ならびに,最近の結果を報告されました.

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 今回の研究会では,J-PARC/MLFに整備された中性子実験装置を駆使して物質科学研究を推進している茨城大学の量子線科学専攻と,茨城県BLの運転・維持管理を行っているフロンティア原子科学研究センターの方々を中心に,利用している実験装置の機能や物質科学に関する研究成果を紹介していただきました.41名の参加者があり,活発な議論が交わされました.今後,BL20「iMATERIA」を始めとして物質科学に関係する装置の利用が増えることが期待されます.