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中性子産業利用推進協議会

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平成28年9月28日(水)に研究社英語センター大会議室において,平成28年度薄膜・界面研究会を開催しました。

エレクトロニクス,医薬・バイオなど,あらゆる分野で使用されている材料の更なる高機能化には,バルク構造や物性の制御に加え,表面・界面の制御が重要です.今回の研究会では,材料表面・界面・超薄膜の構造解析に威力を発揮する中性子反射率測定法の原理から応用事例までを第一線で活躍されている研究者・技術者に講演していただき,活発な議論を行うことを目的に開催しました.

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 初めに,富田俊郎茨城県技監に「J-PARC/MLFの現状と中性子の産業利用」と題して講演していただきました.

 <チュートリアル>では,山田悟史KEK助教が「中性子反射率法の基礎」と「中性子反射率計SOFIAについて」,曽山和彦J-PARCセンターMLF副ディビジョン長が「中性子反射率計SHARAKUと偏極解析について」と題してそれぞれ講演されました.
 山田助教は,中性子反射率法では,nmからサブμm領域で中性子に対する屈折率の深さ依存性を測定し,高い透過性や重水素化ラベル法を利用することによってX線では評価できない相補的な情報を得ることができること,ならびに,ソフト界面解析装置SOFIAの性能と実験環境について説明されました.
 曽山副ディビジョン長は,偏極中性子反射法の原理とともにBL17「SHARAKU」の性能と測定例を紹介されました.

 <反射率法の学術成果>セッションでは,檜垣勇次九州大学助教が「中性子反射率法による高分子電解質ブラシ界面水和状態の解析」,横山英明東京大学准教授が「中性子反射率測定によるポリエチレングリコールブラシと環状分子α-シクロデキストリンの包接錯体形成の理解」,田中敬二九州大学教授が「中性子反射率測定による無機固体界面上に調製したゴム架橋薄膜の凝集状態」,堀耕一郎KEK助教が「無機固体表面におけるエラストマーの分子鎖熱運動性解析」,阿久津和宏CROSS研究員が「偏極中性子反射率計「写楽」におけるソフトマターの構造解析」と題してそれぞれ講演されました.
 檜垣助教は,水和膨潤状態にあるポリマーブラシの密度分布を中性子反射率法により解析することにより,重水界面の散逸層と基板界面の高密度層,ならびに,バルク層からなる不均一構造の存在を確認し,分子構造に起因する静電相互作用に基づく界面構造の変化を明らかにし,さらに,高分子電解質ブラシと双性イオンポリマーブラシの防汚・潤滑特性を分子鎖の水和膨潤構造に基づいて,膨潤した界面散逸層の厚みと防汚・潤滑特性の相関を明らかにした結果を報告されました.
 横山准教授は,ポリエチレングリコール(PEG)と環状分子α-シクロデキストリン(α-CD)の包接錯体において,基板上にPEG鎖を固定し,錯体同士が無限に凝集することを防いだ状態で錯形成反応過程初期の構造変化を中性子反射率測定により追跡した結果について報告されました.
 田中教授は,石英の上に調製したポリイソプレン(PI)架橋薄膜を良溶媒に浸漬させた際の膨潤度の分布を中性子反射率測定し,基板界面にほとんど膨潤しない層,および,この界面層と薄膜内部相の間に中間層が形成されること,ならびに,これらの層はバウンドラバーの形成と密接に関係していることを報告されました.
 堀助教は,無機固体、とくにカーボン材表面に吸着したエラストマーの分子鎖熱運動性に関して,疎水性を有するカーボン材表面におけるエラストマーは、材料内部と比較して、分子鎖熱運動性が著しく低下していることを報告されました.
 阿久津研究員は,BL17「写楽」で行われているソフトマターの構造解析に関して,偏極中性子反射率法を用いた有機薄膜の構造解析と動的核スピン偏極(DNP)法,ならびに,斜入射小角散乱(GI-SANS)法などの整備状況について報告されました.

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 <反射率法の産業応用>セッションでは,宮崎司CROSS研究推進部副部長が,「中性子反射率による粘着剤/被着体界面の構造解析 ~粘着メカニズムの解明に向けて~」,原田雅史豊田中研主任研究員が「リチウム電池における電極/電解液界面のオペランド観察」,新関智丈アート科学研究員が「防錆用シリカコーティング膜の中性子反射率法による構造解析と高性能化」と題してそれぞれ講演されました.
 宮崎副部長は,粘着剤/被着体界面における粘着メカニズムにおいて,界面での"ぬれ",偏析,分子の相互拡散が粘着力を制御していると考え,"ぬれ",偏析,分子の相互拡散を見る目としての中性子反射率測定の有用性を説明されました.
 原田氏は,より性能の高いLiイオン電池を作るためには,電気化学反応が生じる場所である電極と電解液の界面を制御する必要があるため,中性子反射率計により,モデル電池の固液界面構造を電位を変えながらオペランド観察を行い,充電時には,負極にリチウムが挿入しSolid Electrolyte Interphase(SEI)とよばれる被膜が生成することを明らかにした結果を報告されました.
 新関氏は,シリコン基板上に防錆材であるPerhydropolysilazane (PHPS)ならびに,PHPSとDimethylsilazane-methylsilazane copolymer(PDMMS)の混合物のコーティング膜を作成し,中性子反射率法により膜の構造と水の浸透状態について調べた結果を報告されました.

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 今回の研究会では,材料表面・界面・超薄膜の構造解析に威力を発揮する中性子反射率測定法に関するKEKのS型課題における主要な成果をご紹介いただく一方,産業界の製造現場の第一線で活躍されている研究者・技術者に講演していただき,活発な議論を行っていただきました.薄膜・界面研究会としてはこれまで最多に並ぶ60名もの参加者があり,活発な議論が展開されました.