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中性子産業利用推進協議会

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【発表のポイント】
・リン系超伝導体(LaFePO0.9)で高エネルギーの反強磁性磁気ゆらぎを世界で初めて発見
・強磁性磁気ゆらぎと超電導との新たな関係の解明により,新しい超伝導体を探索する手掛かりになると期待される

総合科学研究機構中性子科学センターの石角元志技師と原子力機構先端基礎研究センターの社本真一研究主席,J-PARCセンターの梶本亮一研究主幹らは,J-PARC MLF,米国のオークリッジ国立研究所(ORNL),フランスのラウエ・ランジュバン研究所(ILL)の中性子非弾性散乱実験により,鉄リン系超伝導体(LaFePO0.9)で高エネルギーの反強磁性磁気ゆらぎを世界で初めて発見しました.

鉄系超伝導体の発見以来,その超電導の発現には反強磁性磁気ゆらぎが密接にかかわっていると考えられ,様々な鉄系超伝導体に対し,反強磁性磁気ゆらぎの探索が行われてきました.その結果,反強磁性磁気ゆらぎのエネルギーと超伝導転移温度(Tc)には関係があり,Tcの低い物質では,反強磁性磁気ゆらぎのエネルギーは低いか,存在しないと考えられてきました.鉄リン系超伝導体(LaFePO)では,酸素濃度を正確に調整しないと超伝導が生じず,超伝導を示すものでもTcは5K程度という低温でした.Tcが5Kの鉄リン系超伝導体(LaFePO)では,約2.5meV程度のエネルギー領域に反強磁性磁気ゆらぎが存在することが期待されました.しかし,米国や英国のグループの先行研究で,この領域に反強磁性磁気ゆらぎが見つからなかったため,鉄リン系超伝導体(LaFePO)には反強磁性磁気ゆらぎはないと信じられていました.

今回,上記の研究グループは,酸素濃度の調節条件を最適化することによって高品位鉄リン系超伝導体(LaFePO)試料の大量合成に成功しました.この試料を用いて,これまで見過ごされてきた高いエネルギーまで観測領域を広げることによって,予想よりも約15倍程度高い約40meVに反強磁性磁気ゆらぎが存在することを世界で初めて明らかにしました.これにより,高エネルギーの反強磁性磁気ゆらぎを有する超伝導体が必ずしも高い超伝導転移温度を示さないことが分かりました.これまでの常識とは異なる高エネルギーの反強磁性磁気ゆらぎの発見により,鉄系超伝導体において超伝導機構のカギとなる反強磁性磁気ゆらぎの役割への理解が深まることが期待されます.

 本研究成果は,英国の科学雑誌「Scientific Reports」に11月5日にオンライン掲載されました.下記のURLをご参照ください.
  https://www.nature.com/articles/s41598-018-33878-x

研究グループでは図(a)に示すように試料中の超伝導の割合(超伝導体積分率)が高い良質な粉末資料を大量に合成し,反強磁性磁気ゆらぎの有無を先行研究よりも高いエネルギーまで詳細に調べました(図(b)を参照).中性子非弾性散乱実験は,J-PARC MLFのBL01「4次元空間中性子探査装置:四季」や米国オークリッジ国立研究所(ORNL),フランスのラウエ・ランジュバン研究所(ILL)で行いました.
 その結果,図(b)に示すように30meVから50mwVまでの高エネルギーで,予想される波数領域に反強磁性磁気ゆらぎによるピークを発見することができました.これまでの常識に反するこの反強磁性磁気ゆらぎの発見は,粉末資料の質や量だけでなく,特に,幅広いエネルギーを同時に測定できるBL01「四季」を用いることで実現しました.
0124tetukei.png(a) 超伝導体の帯磁率の測定結果
(負に大きくシグナルが出ることで超伝導体積分率が高いことが分かる)
(b) 30Kでの中性子非弾性散乱強度
(30meVから50meVでは,波数2.5Å-1に反強磁性磁気ゆらぎによるピークが見え
る.図中の矢印)