|
中性子産業利用推進協議会 〒319-1106 カウンタ: |
【発表のポイント】 総合科学研究機構中性子科学センターの石角元志技師と原子力機構先端基礎研究センターの社本真一研究主席,J-PARCセンターの梶本亮一研究主幹らは,J-PARC MLF,米国のオークリッジ国立研究所(ORNL),フランスのラウエ・ランジュバン研究所(ILL)の中性子非弾性散乱実験により,鉄リン系超伝導体(LaFePO0.9)で高エネルギーの反強磁性磁気ゆらぎを世界で初めて発見しました. 鉄系超伝導体の発見以来,その超電導の発現には反強磁性磁気ゆらぎが密接にかかわっていると考えられ,様々な鉄系超伝導体に対し,反強磁性磁気ゆらぎの探索が行われてきました.その結果,反強磁性磁気ゆらぎのエネルギーと超伝導転移温度(Tc)には関係があり,Tcの低い物質では,反強磁性磁気ゆらぎのエネルギーは低いか,存在しないと考えられてきました.鉄リン系超伝導体(LaFePO)では,酸素濃度を正確に調整しないと超伝導が生じず,超伝導を示すものでもTcは5K程度という低温でした.Tcが5Kの鉄リン系超伝導体(LaFePO)では,約2.5meV程度のエネルギー領域に反強磁性磁気ゆらぎが存在することが期待されました.しかし,米国や英国のグループの先行研究で,この領域に反強磁性磁気ゆらぎが見つからなかったため,鉄リン系超伝導体(LaFePO)には反強磁性磁気ゆらぎはないと信じられていました. 今回,上記の研究グループは,酸素濃度の調節条件を最適化することによって高品位鉄リン系超伝導体(LaFePO)試料の大量合成に成功しました.この試料を用いて,これまで見過ごされてきた高いエネルギーまで観測領域を広げることによって,予想よりも約15倍程度高い約40meVに反強磁性磁気ゆらぎが存在することを世界で初めて明らかにしました.これにより,高エネルギーの反強磁性磁気ゆらぎを有する超伝導体が必ずしも高い超伝導転移温度を示さないことが分かりました.これまでの常識とは異なる高エネルギーの反強磁性磁気ゆらぎの発見により,鉄系超伝導体において超伝導機構のカギとなる反強磁性磁気ゆらぎの役割への理解が深まることが期待されます. 本研究成果は,英国の科学雑誌「Scientific Reports」に11月5日にオンライン掲載されました.下記のURLをご参照ください. |
Copyright© 2008, Industrial Users Society for Neutron Application. All rights reserved. |
||
![]() |